目は一つ。
皮膚はただれ、両手は引きずるように長い。
陸に上がれば、災いを喚ぶ。
背中を見せてはいけない。
追われてはいけない。
出会ってはいけない。
新月の子は暖炉に隠せ。
“病の獣”が来る前に。
51 “病の獣”(Ⅲ)
読み終わってすぐ、タペストリーを裏返した。
不吉な戒めの言葉が胸のうちを冷え込ませる。与太話だと笑い飛ばすには、真に迫りすぎていた。
「“触ってはいけない”」
店主の重々しい声に肩が跳ねた。だが声の主は私を見てはいなかった。店主アーサーは更に声を張り上げ、“いわく”をつづけた。
「そう!触ってはいけなかったのです……!欲に目がくらみ、古の戒めを破った商人は非業の死を遂げました。どうですか、この呪いの壺は!」
「ほうほう。確かにそれは呪われてるな」
ルフィは我慢強く店主アーサーの話に相槌を打っていた。彼もマリオと同じく、なんだかんだで面倒見の良いタイプなのである。
「そうでしょうそうでしょう!さすが旅人殿」
店主アーサーは久しぶりの客に大興奮のようだった。この機会に一生分のウンチクを語り尽くしておくつもりなのか、次から次へと新たな話題を持ちだしてくる。
「ということで、次はこちらの品ですが」
「その前にひとついいか? 聞きたいことがある」
その話を遮って、ルフィはようやく本題を切り出した。
「最近何か珍しい出来事はなかったか?」
「珍しい、珍しい……ああ!そういえば!」
「そういえば?」
「これなんてどうです!?この貝殻は非常に珍しく―― 」
ルフィの肩ががくりと落ちた。
「ああそうかい、貝殻ね」
「―― ということで大変貴重なものなのですよ。村の人間などにはこの価値は分からないでしょう。絶ェッ対に!」
「そうだな……」
「さて、お次の品は……おや、奥に置いてきてしまいましたね。カウンター前のお客様方、その場を離れずにもう少しだけお待ちください」
貝殻についての長い長いウンチク話に区切りをつけた店主は、イタチのように奥へすっ飛んで行った。お宝鑑定調だった語り口が、いつの間にやらテレビショッピングである。
行きましょう、と声を出さずに口だけ動かした。このままだと本当に一生分のうんちくを聞かされかねない。彼の方も同じことを考えていたらしく、一も二もなく頷き返してきた。
ところがいざ店から出ようとして、例のタペストリーを持ったままだったことに気付いた。慌てて棚の前に戻り、最上段に戻そうとしたが、あと少しが届かない。
脚立を引き寄せようとした時、背の高い影がかかった。
「貸せ」
後ろからさっとタペストリーを取り上げた彼は、苦もなく元あった場所に放り入れた。
「ありがとうございます」
「急ぐぞ。もう戻ってくる」
強めに手首を引かれる。狭い店内を通りぬけ、私たちは何事もなかったかのように表に出た。
古道具屋を離れた私たちは、村外れの丘を登り、その頂上で腰を下ろした。短い下草は柔らかで、話を聞き疲れた私たちには寝転んだら最後、指折り数える暇もなく夢の国へと案内してくれる魔法の絨毯のように思えた。
「よいしょ、と。おっと危ねェ危ねェ」
尻の周りから邪魔な草を除けるルフィ。やけに慎重な手つきである。
「虫でもいましたか?」
「いんや。ただ、気をつけねェと草原は良く燃えるからな」
「またまたァ、放火魔みたいなこと言って」
「当たらずといえども遠からず」
ルフィは軽く笑って言った。
「さて、そろそろ昼メシにするか!」
じゃーん、と効果音つきで、ルフィは大きな包みを取り出した。
「何ですかそれ?」
「肉肉サンドイッチだ!多分!」
「多分?」
「さっき子連れのオバサンに手ェ貸してやったら、その礼にくれたんだ」
包みの中に入っていたのは、予想通りの肉たっぷりサンドイッチだった。
村にサンドイッチを売っているような店はなかったし、彼が自分で作るというのはもっとなさそうだから、オバサンを助けたウンタラカンタラは事実だろう。会った時に食べていたソーセージといい、彼は歳上の女性に対して無意識にジゴロ的な手腕を発揮してしまうようだ。
肉肉しい匂いにつられて、腹の虫が鳴いた。
我慢、我慢。食事は一日二食と決めたのだ。
マリオにはかなり余裕を持ってお金を借りている。が、この先どれだけ旅費や食費が必要になるか分からない。節約できるところは節約しなければ。
ヨダレが零れそうになるのを抑えながら、ルフィの大口にこれまた大きなサンドイッチが運ばれていくのを眺めた。いいなあ。美味しそうだなあ。
ところが、さあいよいよ口に入るぞ、というところでルフィは突然手を止めた。そして深い深いため息をついた。
「仕方ねェな」
くい、と顎で合図をしてくる。示された通りに手を出すと、ルフィは二つあったサンドイッチのうち、ひとつを私の手に載せた。
「やる」
「く、くれるんですか!?」
「あんな物欲しそうな目で見られたらな」
「ルフィさん素敵!ルフィさん太っ腹!」
「そういう褒められ方なら聞いてて楽しいな。もっと言っていいぞ」
「ルフィ!万歳!ルフィ!イエー!」
ルフィルフィと名前を連呼すると、彼は目を細め、心底嬉しそうな顔をした。
「そういやアンタ。旅人だって言ってたが、どの辺から来たんだ?」
サンドイッチをむしゃむしゃ食べていたルフィが、思い出したようにこちらを見た。
かつては訊かれるたびに言葉を濁していた質問だったが、最近はずいぶん場慣れしてきて、「いくらでも聞けい!」と言いたいくらいの心持ちである。
「どこだと思います?」
「このあたりでアンタみたいな奴がたくさんいる島と言やァ、タタールか?」
「すごく、馬に乗ってそう……元寇力高そう」
島にも関わらず、とても内陸っぽい。民家はやはり移動式なのだろうか。この海だらけの世界に遊牧騎馬民族が存在するかどうかは置いておいて。
「違うのか。じゃあかなり遠くなるが、ギゴショク?」
「すごく、諸葛孔明いそう……群雄割拠力高そう」
ひとつの国になっているところを見ると、三人の仲は良好らしい。レッドクリフが起こらないことを祈る。
「うーん、他には。まさかワノ国か?」
「ワノ国?」
「さすがに違うか。鎖国中だしな」
その後もブツブツと国名らしきものを唱えていたが、思い当たるものがなかったらしく、ルフィは素直に降参のポーズをとった。
「分かりません」
「フフ、私は“偉大なる航路”の出身ではないんです。“東の海”から来ました」
本当はもっともっと遠いところだが。
しかし、そんなことまで言う必要はない。一般の人々にとって“偉大なる航路”と、その外の海は完全に隔絶された世界だ。境界を超えて二つの世界を行き来できるのは、海軍か権力者か、もしくは海賊だけ。
“偉大なる航路”で生まれ育った人々は、“偉大なる航路”の外、と聞くだけで「へェ! そりゃあ遠いところから来たなあ」と驚いてくれる。大して知らないものだから、故郷のことを捏造してもバレないし、余計な突っ込みもされない。
はずだったのだ。
「ホントかよ! 俺と一緒じゃねェか!」
「そうなんですか!それは珍し……ほほ?」
笑い顔のまま固まった。深めの墓穴を掘ってしまったかもしれない。
「生まれは“南の海”なんだが、育ちがそっちでよ。いやァ、久しぶりに同郷に会った!“最弱の海”だけあって、こっちに来てる奴も少ねェんだよな。懐かしいなァ」
「あ、あはは、確かに来てる人少ないですねぇ」
知ったかぶりも良いところである。私の反応に気を良くしたらしく、ルフィは私の背中に手を回し、バンバンと親しげに肩を叩いた。
ローカルトークに持ち込まれるとつらい。そうならないための出身地偽装だったのに。
「で、“東の海”のどこだ。セレベスのあたりか?もっと北か?」
「えっと、ものすごく小さな国で。さすがのルフィさんもご存知ないかも」
「遠慮すんなって。俺のいたところもそんな感じだったから」
興味津々の様子で目を覗き込まれる。万事休す。
言い訳を頭のなかに並べてみたが、どれも上手くなく、迷った末そのまま答えることにした。
「ええっと、美浜、というところです」
「ミハマ?」
「ここと同じで、海の綺麗な場所です。とっても小さな町ですが、皆仲良く暮らしていて」
言葉に出すと、懐かしい故郷の姿が少しずつ蘇ってきた。丘の上の学校。坂道。釣り竿を持ったおじさん。古い商店街。買い物袋を持ったおばあちゃん。その小さな後姿。
それから、日に焼けた便箋。
「慎ましくも、平和な子供時代でしたね」
「平和ねェ」
頭の下に腕を敷いて草原に寝転んだルフィは、そのままの姿勢で行儀悪くサンドイッチにかぶりついた。
「腹見せて寝転んで、旨いモン喰って。ガキの頃はそんなことさえ苦労した。だけど、それはそれで楽しかったんだ、多分」
瞳は空を映していたが、彼が見ているものは何か別のもののようだった。
横顔を見ているうち、私はぴんとひらめいた。
「ねえ、ルフィさんってお兄ちゃんでしょう? 下にいるのは妹じゃなくて弟」
「なんでわかった?」
ルフィは少し驚いたようだった。
「昔ご近所にいた兄弟がね、そういう感じだったんです。お兄ちゃんの方は普段『俺の方がエライんだぞ』って顔してるのに、弟がピンチになったら真っ先に駆けつけるんですよ」
「へェ」
「弟を助けた後、手のかかる奴だなあ、って面倒くさそうな顔をするんです。でも、その顔が見ようによっては、ね。子供心に『これがお兄ちゃんなんだな』と思いました」
「さァ、どうだろうな。俺はそんなに良い兄貴じゃなかった」
ルフィはぽつりと言い、瞳を伏せた。
「アイツは本当にまっすぐなヤツでさ。誰か憎んだりとか、妬んだりとか、そういうしみったれた考えとは縁がねェ」
生まれついてのものなのかもな、と言った彼の口元は申し訳程度に笑っていた。いつもの茶化すような笑みでもなければ、夏の太陽みたいなあの満面の笑みでもない。
こんな風に笑う彼もまた、本来の姿のひとつなのだろう。
「それでも兄弟は兄弟なわけですよ。兄弟の間に良いも悪いもない、っておばあちゃんが言ってました。私が言っても説得力皆無ですが」
「アンタは一人なのか?」
「ええ。実の兄弟に負けないくらい、仲の良い友人はいたんですけどね。同い年だから“兄”という感じではなくて。ああ、でも今は一応歳上になってるのか」
「同い年なのに今は歳上? なんだそりゃ」
ルフィは草原に横になって笑った。
「嘘みたいだけど本当なんですよ!」
「はいはい、分かった分かった。そういうことにしといてやる」
「あー!さては信じてないですね?」
「まさか。その程度のこと、この海じゃ珍しくもねェさ。真実だとか嘘だとか、あるとかないとか、いるとかいないとか、俺はイチイチ考えてないぜ」
日に焼けた腕が草の茎を一本手折り、宙にびゅうんと円を描いた。大人びた声音と無邪気な口調のアンバランスさは、聞く者を否応なく惹きつける。
「見えないもの、聞こえないもの、触れないもの。今の自分に説明できないものを、“あり得ない”って片付けちまうほどケチなことはねェ」
自分や自分の周りにいる者の目は確かなのか。最新の科学とやらは完璧なのか―― 知識の檻に囚われて、皆がいつの間にか忘れてしまっていることを、彼はあっさりと陽の下に晒す。
そばかすが茶目っ気たっぷりに笑いかけてきた。
「信じられることだけ信じていても楽しくないだろ?」
―― 陸の奴は“正体”ってのが好きだな。
あの時の彼の真意を、今になってようやく理解した。
「そうですね」
「どいつもこいつも不自由すぎんだよ。もっと肩の力を抜いてだな。ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」
「ルフィさん、それ違うやつ」
「あれ、そうだっけか? まァ、何でもいい。とにかく“くい”が残らなきゃいいんだ」
彼は腕を組んで、小さな子どものように首を傾けた。何と言えばいいのか、その様子が妙に好ましくて、私は両手をワキワキさせた。
「“くい”ですか……それなら」
ごくり、と唾を飲み込み、私は餓鬼のごとくルフィに飛びかかった。
「サンドイッチもう一欠片ください親切なお兄さァん!」
同情するならメシをくれ、とばかりにサンドイッチに手をのばす。かっさらったサンドイッチを掲げると、ルフィは「俺のメシ!」と悲鳴を上げた。
「おいコラ、イチル!ちょうど半分に分けたじゃねェか」
「いいえ。兄貴は自分を犠牲にして子分たちを生かすのです」
「子分にした覚えはねェ。返さねェと燃やす」
「そこを何とか!このままだと空腹で死んじゃいます」
「アンタな」
だだをこねると、ルフィはうんざりしたように眉を下げた。
「一口だけだからな。一口だけ」
ドッタンバッタンと賑やかな食事を終え、久々に心の栄養を得た私は、ルフィの後について軽い足取りで丘を下った。そろそろ午後の聴き込みをはじめなくてはならない。
ところが、丘裾の小川を渡ろうとしたところで、視界の端に見覚えのある金髪を捉えた。前行く男の腕を慌てて掴む。
「ちょっと待ってください」
「どうした?」
「アンジェリーナさんが」
ほぼ同じタイミングで、彼女もこちらの存在に気付いたらしかった。
昨日とは違って、私の隣にはいかつい男がついている。逃げられてしまうかと思ったが、意外なことにアンジェリーナは走って近づいてきた。
「旅人さん!」
「アンジェリーナさん、どうしてここに」
「思ったより仕事が早く終わったの。帰ってきたらジャックが妙にソワソワしていたからもしかして、と思って。私も貴方ともう一度話がしたかったのよ。母には内緒でね」
はきはきと喋るアンジェリーナ。気弱そうなイメージだったが、実際はそうでもないのかもしれない。
「話したいことというのは、やっぱりエマさんについてですか?」
「ええ」
彼女は頷き、不安そうに周囲を見渡した。
「心配するな。近くに人の気配はねェ」
緊張した面持ちのアンジェリーナは、ルフィの言葉を聞いてほっとしたらしい。深呼吸をひとつしてから、友人についての話を始めた。
「姿が見えなくなったのは、ちょうど三ヶ月前」
友達のエマが行方不明になっている。
川べりに腰を下ろし、そう口火を切ったアンジェリーナは、向かい合う私たちの目をしかと見て言った。
「村の中はもちろん、森も港も思い当たるところは全部探したわ。村人総出でね。でも、どこにもいなかった」
「三ヶ月前となると、ちょうど前回の定期船が来た時期ですね。それなら……」
「ええ。彼女がいなくなった時、皆もそう言ったわ。定期船でこっそり都会に出て行ったんじゃないかって。でもね、そんなことはできないのよ」
「どうして?」
アンジェリーナは港の方角を指差した。
「あの港ね、普段は無人なの。だから定期船が来る時だけ、村の者が行って受け入れの準備をしているんだけど、その時の当番によると、エマがいなくなった時にこの島に降りた客は新聞屋さんと行商さんだけ。乗って帰ったのも二人だけ。どちらも毎回定期船と一緒に来る馴染みの人よ。入れ替わるのは難しすぎるわ」
「密航は?」
そう問うと、彼女は驚いた顔をした。
「密航?だってあの船は……」
「狭すぎる、だろ? 思いだせよ。俺たちも同じ船に乗ってきたんだろうが。密航つったって、客室一つと船倉一つの筏同然の船だぜ。一日ならまだしも何日も隠れるのは無理だろ」
“定期船で来た旅人”という設定を、迂闊にも自分自身で壊しそうになった私に、ルフィがすかさず助け舟を出した。
海賊船に誘拐されてきたという事件性のある事実は、できるかぎり伏せておきたい。当方、身分証明の類は一切なし、おまけに一時的には指名手配までされていたのだ。騒ぎになって海軍でも呼ばれたら非常にややこしくなる。
「大きな船だったとしても同じことよ」
彼女は白いエプロンをぎゅっと握りしめた。
「あの子はおしゃれだったから、都会への憧れはあったかもしれないわ。でも黙ってそんなことをする子じゃない。エマが“新月の子”だって言ってもそんなの」
新月の子?
聞き返す前に、彼女は手を伸ばし、私の袖に縋り付いた。
「きっと何かあったのよ!そうに決まってるわ。お願い、旅人さん。エマを助けてあげて!」
「“病の獣”からか?」
ルフィの一言は、彼女を凍りつかせた。
金色のまつげを伏せたアンジェリーナは、それっきりその話について口を閉ざしてしまった。
「分かったことがあればまた連絡しますね、アンジェリーナさん」
「ありがとう。待ってるわ」
そばかすの頬を不安げな色を浮かべつつも、彼女はわずかに微笑んだ。
「じゃあ、私たちはこれで」
「そういえば旅人さん。貴方たち、やっぱりお知り合いだったのね。まあ、当然よね。普通に考えて、女の子一人で外海を旅するなんてできないもの」
アンジェリーナは私とルフィを交互に見て、納得したように頷いた。
「港当番が言ってたの。今回の定期船はお客が多かったって。常連の新聞屋さんと行商さん、それから旅人さんが三人。合わせて五人も。定期船の中、すごく狭かったでしょ?」
「え、ええ。狭かったです、とっても」
怪しまれないように相手に話を合わせておく。背の高い彼女は、上から私の目を覗き込んできた。
「最後に一人遅れて入港手続きをした旅人さん、それがきっと貴女だったのよね?フードを被っていたから、その時は男か女かも分からなかったらしいけど」
「船の中に忘れ物をしてしまって、二人には先に行っててもらったんですよ」
適当に頷いておくと、彼女はほっとした表情を見せた。
「良かった。正体不明の旅人さんなんて怖いわね、って母と話していたの。女の子だったなら安心だわ」
そう言って、彼女はチュニックワンピースの裾を翻した。
「じゃあ、また。そろそろ戻らなきゃ」
去っていく金髪の後姿を見ながら、私はルフィに声をかけた。
「さて、私たちも戻りますか」
「待て」
「「どうしました、ルフィさん」
見上げたルフィの眉間には、深く皺が刻まれていた。
「アンタがここに来たのは、本当に定期船が行った後だったのか?」
「もちろん。間違いなく四日前です。港には定期船も村人も見当たりませんでしたし。何か気になることでもありましたか?」
「俺たちが定期船に乗ってきた時、中にいたのは四人だけだった。新聞屋と行商、それから俺たち二人」
険しい表情のまま、彼はゆっくりと言葉を発する。
四人?
首の後ろにひやりと冷たい汗が伝った。
「俺たちは最後の一人の姿を見ていない。船の中でも。この村に来てからも。“五人目”なんて居るはずがねェ」
背中を見せてはいけない。
追われてはいけない。
出会ってはいけない。
新月の子は暖炉に隠せ。
“病の獣”が来る前に。