蓼食う虫どもの話

後日談


 あの大騒動の後、猛反省した(正しくは、させられた)私は具現化していた刀を消してしまうことにした。
 騒動の原因となったというのが表向きの理由だが、実際のところはもうひとつ事情がある。
 あの刀、実は私のその時の気分で意外と形が変わるのである。心のかたちを示す物だとばれてしまった以上、そんな恥ずかしい物をどこに置いておけるのか。
 一度消すと再び出すのに結構な力が必要なため、なんとなく勿体無くて今まで出しっ放しにしていたが、さすがにもう良いだろう。心の平穏を守るため、これ以上衆目に触れさせるのは絶対なしだ。
 そう思って消す作業に取り掛かろうとしたら、何故か全員から必死に止められた。
 消すくらいなら俺たちが管理する!と、押さえつけられてあっさり奪い取られたのである。意味が分からない。
 その後どこに置くかを長々と討論していたようだが、そんなに置き場所に困るなら返せ、と言いたいところである。
 数日後、ようやくどこかに安置されたようなので探しに行くことにした。私とあれはリンクしているので、手から離れようともだいたいの場所は分かる。すぐに物をなくす私にとってはなんとも便利な機能である。
 大方どこぞの物置の隅にでも転がされているんだろうな、と思いながら最終的に辿り着いたのは、ところがなんとあの大部屋だった。それも床の間。しかも何故か周囲には新しく注連縄が張られ、「舐めまわし禁止」の札がぶらさがっていた。
 近くにいた今剣に理由を聞いたら、注連縄は取り合い防止のため、石切丸にお願いしたらしい。札についてはちょっと言いにくそうだったが、かろうじて三日月宗近とか小狐丸がなんとかかんとかというのは聞けた。
 ここ数日、鳥肌が立つような耐え難い寒気に襲われることが度々あったのだが、そのあたりの想像をするのはやめておいた。何度も言うが、あれと私はなんだかんだでリンクしているのである。
 ということで刀剣たちの阿鼻叫喚の中、私は初期の宣言通りきれいさっぱり刀を消した後、名前の出た三日月宗近と小狐丸を含む他数名についてもそれぞれ3発くらいずつ殴っておいた。
 今日も本丸は平和です。


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